施設概要
沓掛学荘の理念・方針
沓掛学荘という「居場所」
沓掛学荘は、虐待などを受けて傷ついた子どもの「こころとからだ」の回復を図り成長を促す場です。子どもが一人の人間として成長するために必要な最善の方法と資源を用いて支援に臨んでいます。
沓掛学荘の支援理念
「光の子として歩みなさい」(エフェソの信徒への手紙 5章8節)
“光”とは、イエス様のこと、イエス様が語ったこと、そして、その中で示されたことで、人としての振る舞い、生き方を指しています。
“子”とは、文字通りの子どもという意味を含めて神から見た人間を指します。
イエス様がそうであったように「人を愛し、人から愛される人になってほしい」という願いが込められています。
加えて、法人の理念である「キリスト教主義」「セツルメント思想」「ボランタリズム」を基本精神として支援を進めています。
キリスト教主義
沓掛学荘を運営する興望館は、1919年キリスト教婦人矯風会外人部会の関係者により開設されたことから、キリスト教の精神を根底に置き福祉事業を行なっています。沓掛学荘でもキリスト教精神に基づく人間理解をふまえて支援を行なっています。
セツルメント
19世紀英国で、貧民街などに聖職者や大学教員・学生などが住み込んで(settlement)住民と生活を共にし、住民の生活環境の向上などをめざして始まった運動です。日本などでも、その中で先進的な福祉支援を行なってきました。
戦後は福祉制度が整い、高度経済成長によって国民の生活水準も上がり、セツルメント実践の必要性は薄らいできた面もありますが、その精神は、地域の福祉課題をみつけ住民とともに解決していくという意味で、こんにちの地域福祉に継承されていると言えます。
ボランタリズム
小学館『大辞泉』には「公共・福祉のためにする個人の自発的な協力。通常、無償で行う」と記されています。その基本的性格として新崎(2005)は「自発性・主体性」「公共性・福祉性・連帯性」「無償性・非営利性」「自己成長性」「継続性」の五つを挙げています。
そのうち「無償性・非営利性」に注目が行きがちですが、業務として取り組む沓掛学荘では「自発性・主体性」「自己成長性」に重きをおき、子どもの支援をはじめ子ども自身の成長にとっても必要なことだと考えています。社会的養護という創造的な営みをする上での基盤だと言えるでしょう。
施設の特徴
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家庭的で小規模な支援
一つの建物で子ども6人と、職員数人が交替で生活する「ユニットケア」を行ない、家庭的な生活形態や住環境をつくりだすことに意を注いでいます。さらに、まちの中で独立した「グループホーム」も設置して、より家庭に近い、豊かで質の高い支援をめざしています。
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専門性を生かした手厚い支援
東京都が指定する「専門機能強化型児童養護施設」であることから、国が定める職員配置のほか、東京都独自の基準により精神科医(非常勤)、治療指導担当職員が配置され、児童指導員と連携を取りながら手厚い支援を行なっています。
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自然を生かした
人間関係を育む支援沓掛学荘は東京都の所管する施設ですが、自然環境に恵まれた清涼で爽やかな長野県軽井沢町に所在します。これは80年余り前の太平洋戦争の際、幼児疎開施設を開設し、戦後は戦災孤児を受入れ、その後は児童養護施設として運営されてきたことによるものです。
沓掛学荘は当初キャンプ施設として設置したことから東京の子どもがキャンプに来ていました。戦後は毎夏、東京と沓掛学荘の子どもが一緒にキャンプをして友だち関係を育んでいます。 -
職員を支援する研修
沓掛学荘では職員に身につけてほしい知識・技能を明示し、それを身につけるための研修を実施しています。施設長以下職員代表数名で研修委員会を組織し、毎月研修を実施しています。外部研修のほか、研修委員会が企画する内部研修を全職員が年2回受けられるよう、特に新任者には年4回の研修を用意して、職場への適応を図り業務の習得を促進し、困りごとなどにも対応しています。
代表者挨拶
「こういう大人でありたい」
2009年、法人の創立90周年を迎えるにあたり職員によるワークショップが開かれ、今後どのような職員をめざすのかを話し合いました。挨拶にかえて私たちの姿勢をここに示します。
①子ども達の最善の利益のために努力する大人でありたい。
②子どもから学ぶ大人でありたい。
③自分でできることを頑張る大人でありたい。
④チームワークを作り出す大人でありたい。
⑤感性・センスを磨きつづける大人でありたい。
館長 野原健治
施設長挨拶

子ども達が育つ家として、
子ども達と共に
ありふれた日常を営むことができる場所でありたいと思っています
ここで暮らす子供たちは、様々な事情により、家族と共に生活することができない子どもたちの「家」でありたいと考えており、ひとりひとりの子どもを大切にし、のびのびと安心して生活できるよう心がけています。
その子供たちの可能性を信じ、共に生活することで、徐々に職員との信頼関係を築いていく。そんな人間関係を通じて健全なパーソナリティの基礎を形成し、社会人として自立する希望と意欲を育てていきたいと思います。
施設長 神戸正則
施設情報
興望館沓掛学荘
- 創立
- 1940年
- 施設長
- 神戸正則
- 現在地
- 〒389-0111 北佐久郡軽井沢町大字長倉2436
- 電話番号
- 0267-45-6186
- FAX
- 0267-45-5947
- 職員
- 施設長1名 主任1名 事務員2名 児童指導員23名 専門職5名 栄養士3名 調理員4名 用務・清掃1名
(正職員25名・非常勤職員11名) - 定員
- 30名(男子15名、女子15名)
沿革
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1919(大正8)年
母体となる興望館は、北米の婦人宣教師などが中心となり設立され、東京市本所区松倉町(現、東京都墨田区東駒形4丁目)で保育などの事業を開始
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1940(昭和15)年
長野県軽井沢町にキャンプ施設として「沓掛学荘」を開設
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1944(昭和19)年
出征遺母子及び幼児と学童を収容するための「疎開の家」開設
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1945(昭和20)年
敗戦後、戦災孤児、引き揚げ孤児、その他要保護児童の収容、育成の施設となる
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1948(昭和23)年
児童福祉法による養護施設(現、児童養護施設)として、東京都により認可(いわゆる都外施設)、また長野県からも認可
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2000(平成12)年
児童居室改修工事
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2009(平成21)年
大規模修繕工事および児童棟(ユニット化)新築工事完了
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2009(平成21)年
東京都の専門機能強化型児童養護施設として運営開始
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2023(令和5)年
グループホーム「もみの木」を開設